理工学部生の憂鬱

日々思った事、やってることの備忘録

理工学部生に勧める10冊

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4月に新学期が始まって、はや2ヶ月が経った。
そろそろ授業にも、新入生は大学にも慣れた頃だろう。(それとも中間試験で忙しい頃か)
さいきんは本を読まない学生が増えているそうだが、最高学府に身を置く以上、最低限のたしなみとして本から知識を得られるようにしておくべきだと思う。

今日はぼくがオススメする10冊の本を紹介する。

 

 

人間力

ぼくらは理系の学生、つまり専門職の卵だ。
だが、その前に社会のなかで生きる一己の人間である。まずは社会の中で生きるのに恥ずかしくない人間になる為の本を紹介する。

「人は見た目が全てです 人の内面の全てが外見に出ているのよ」ぼくの好きなマンガのリアル・クローズに出てくるセリフ。
「外見は内面の一番外側」という言葉も有名だが、残念なことに理工学部の学生はなかなか身だしなみに気を使わない人が多い。(気を使っても方向性が間違っている人もいる)
外見を整えるのにオススメの2冊を紹介する。

 

MB『最速でおしゃれに見せる方法』(扶桑社)

メンズファッションのベースとなる理論を教えてくれる1冊。
感覚的なものだと思いがちなファッションにもロジックがあり、本書で紹介される理論を押さえておけばキチンとしたコーディネイトをつくれるようになる。
本のロジックに従えば「普通にオシャレ」なベーシックなコーディネイトが出来上がる。それだけでなく最近の流行、オーバーサイズや野暮ったいスタイル、等にも応用できる。
ベーシックから脱却してより高みに挑みたい、例えば色やシルエット挑戦したくなったら骨格診断やパーソナルカラー診断の本に手を出してもいいだろう。

 

加藤智一『お洒落以前の身だしなみの常識』(講談社)

外見を左右する要素としてファッションと並んで、当人の清潔感も大切だ。
「清潔である」ことと「清潔感がある」ことは違うという導入から、具体的なTipsをふまえながら、身だしなみの大切さを教えてくれる。
雑誌を見てても女性誌はジャンルを問わず新着コスメや身だしなみの特集が組まれているが、男性誌はそうでもない印象だ(最近増えつつあるけど)
理系男子は常に身だしなみについての情報に触れてきた人と比べて、どうしても知識が乏しくなってしまう。だから身だしなみについて1つ1つ具体的に指摘してくれる本は必読だ。
本に書いてない情報を付け加えるなら、首の後ろ側のムダ毛もこまめに剃ったほうがいいのと洗顔時にはクレンジングを使った方がいいと補足しておく。

 

松本圭介『お坊さんが教えるこころが整う掃除の本』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

日本では「掃除」という行為に意味を見出してきた。
世の企業の中には、従業員が自らの手で掃除をする、その行為そのものを重視するところがある。思い起こせば、小中学校でも掃除の時間があった。
企業の中にはトイレを素手で掃除させるところもあり、ネットを中心にやりすぎだとか目的(清潔な職場にする)に対し手段が間違っているなどの指摘がある。学校でも「ちょっと男子! 真面目に掃除やってよ!!」となるのは定石で、掃除は面倒臭いものだとか場合によっては悪業の類のようにすら思われている節がある。
掃除をさせる側は掃除をすることで得られるものがあるという認識があるのだが、させられる側は掃除に意義を感じておらず、この齟齬から前述のような指摘や真面目に掃除をしない男子が生まれる。
本著はお坊さんによる掃除について解説だ。
お寺では掃除は修行の1つであり、日々の大半を占める作務である。修行であるから、キレイにすること以外にも意味がある。キレイにする、その裏側にも隠れた意味がある。
その意味こそ「掃除をさせる側」が認識してる、掃除を通して得られるものだ。
読めば嫌々やっていた掃除が意味を感じられるものになり、自ずから掃除をしたいと思うこと請け合いだ。

 

 

メディアリテラシー 

松林薫『新聞の正しい読み方』(NTT出版)

情報リテラシーを鍛えるのに良い本。
今はテレビもあり、ネットニュースが台頭し、タダで世界中のニュースを即時に知ることができる。ネットの登場で個人レベルで情報を発信できるようになり、一部では新聞をはじめとするマスコミ批判も声高だ。
では即時性がなく、「嘘をついている」とまで批判される新聞に意味はないのか。
答えは否だ。
この本では新聞がどのように成り立っているのか、新聞の独特の言い回しやレイアウトの意味などがこと細やかに紹介されている。ネットでの新聞批判が前提条件を無視した滑稽なものであることも、この本を読めば見抜けるようになる。
即時性のなさなど制約が多い新聞だが、各メディアは一長一短で、新聞には新聞にしかない利点がある。情報リテラシーを鍛えることができる本だから、新聞を読む読まないに関わらず、考えなしに意見や情報を発信できる時代だからこそ読んでおきたい1冊だ。

 

 

教養

教養が大切だと言われる。なぜ大切か、その理由は人によってまちまちだが、考える力を養うためだとか会話の種になるなど挙げられている。以前読んだ学者の本でも教養の引き出しが多く、考えが多角的で面白かった。
大切といわれるだけあって、大学でも1年から3年次まで教養科目が設定されている。
学ぶのは歴史や経済、文学など人文学系の科目だ。それらは高校ではもっぱら暗記科目と呼ばれていた。
暗記して、ただ博覧強記なだけならインターネットで何でも調べられる現代に、意味はない。
「情報」を理解し、「知識」という自分の血肉にして、やっと意味を持つ。
教養は生きる力や問いをつくる力といわれる。それらの力には想像力が必要だ。想像するためには自分自身やそれ以外のことについて客観的に、理解せねばならない。
現代はインターネットの登場であらゆる障壁が取り除かれつつある。それは国境だったり、言語や経済だったりする。またひとりひとりが声を挙げられるようになり、マイノリティにも目が向けられるようになった。価値観の変動する中で、自分自身の揺らがない軸を持ち確固たる自我の形成や、自分自身を世界に発信すること、また多様な生き方を理解し、そして受け入れること。つまり教養は自分個人のためのものと集団のためのものがある。
教養がなぜ大切か、ぼくは答えを出せるようにするために必要だと思う。出した答えは社会に影響を及ぼす。何気ない意見であっても、その裏で傷つく人もいる。人を傷つけない答えや傷つけても尚それが正しいといえる答えを出すためには、教養が必要なのだと思う。
それにぼくたち理系の人間はテクノロジーで人々の生活をかたちづくっていく。なのに自分たちが為す事について、教養という人の営みに関する知識という観点から、思考できないというのも恐ろしい。

 

要約世界史・日本史A(山川出版社)

教養科目といえば歴史や倫理、政治経済などのいわゆる社会科がまず挙げられる。全部学んでおきたいところだが、取り急ぎ1科目というなら歴史だろうか。倫理にしろ、政治経済にしろ歴史の中で紡がれたものであるからだ。
他の科目を学ぶ上で礎になるし、また他の科目を学ぶ中で歴史の知識も強化される。
挙げた本は歴史の教科書のど定番で安定した良い本だが、自分の理解しやすい本を選んだり、教科書は中立的な立場を取らざるを得ないので、そうではない本を手に取るのも良いだろう。

 

谷崎潤一郎『陰翳礼讃』(中公文庫ほか)

『痴人の愛』や『細雪』など耽美小説で名高い文豪・谷崎潤一郎氏の随筆。
日本が古来から培ってきた美意識、それは陰影と共にあると述べた1冊で、多岐にわたる例示が示されている。
先に世界や日本の歴史を知ることが大切だと述べたが、同時にぼくたち日本人の要たるアイデンティティを論理的に理解することも大切だ。
海外に行く人の話を聞くと、みな口を揃えて自分の国について知らないことに気づいたと言う。
日本の伝統工芸がなぜ美しいのか、寺社仏閣など古えの建築になぜ風情を感じるのか、その答えが、本の中にある。
日本人のアイデンティティを学ぶなら新渡戸稲造氏の『武士道』や九鬼周造氏の『「いき」の構造』あたりも良い本だと思う。

 

 

理系学生として

以下の4冊は理系の学生、科学の徒や技術者の卵として読んでおきたい本だ。

 

藤井聡, 中野剛志『日本破滅論』(文春新書)

大学という最高学府に籍を置く身として、どうあるべきかが見えてくる1冊。
なかなかにショッキングな題名だが、内容はいたって真面目である。
現在の社会の違和感や、大衆から支持を受けているが誤っていること(ポピュリズムや劇場型政治)について、素人でも非常にわかりやすく解説されている。
重いテーマから軽めのテーマまで冗談や人文学の知識を交えながら対談する姿から、大学がどういう場所であるべきなのか、その構成員としてどうあるべきなのかが見えてくるだろう。

 

レイチェル・カーソン『沈黙の春』(新潮社)

言わずと知れた環境汚染についての名著。中学の英語の教科書内で取り上げられていたが、大学生になって初めて読んだ。
人間と人間がもつ科学の力が万能ではない事に気付かされる。
ぼくらにとって生まれた時からエアコンなど便利な家電は元よりネットがあるのは当たり前、小中学生の頃にiPhoneが登場して、世界が科学によってどんどん便利に様変わりする様子を見てきた。科学は万能で、世界をアップデートするものだと思っていた。
でも本当にそうだろうか。東日本大震災で福島第1原発では科学に力を制御しきれず、多くに犠牲を生み出した。未曾有の震災によるもので想定外だったというが、大体の損失は想定外によるものではないか。本著のなかで語られる、誤った科学の使い方で失われた景色や命を見ていると、もっと危機感を覚えた方がよいのではないかと思わずにはいられない。


上の2冊は科学者・技術者としての倫理の話だったが、次の2冊は毛色が違う。大学生になるとクラスの前がほとんどだが、人前で発表する機会が増える。ただ見ていて、ちゃんと発表できているのはほとんどいない。

 

高橋佑磨, 片山なつ『伝わるデザインの基本 増補改訂版』(技術評論社)

プレゼンの目的は、人に情報を伝えることだ。そして人間は視覚で多くの情報を得ている。
それなのに残念なPowerPointを作る生徒が後を絶たない。
学術的な資料は得てして情報が多くなるので、見やすくわかりやすいように整える必要がある。見栄えも良ければ尚良い。
そういった資料をつくるのにはセンスがいると思うかもしれないが、1冊目にあげたファッションと同様に、見やすい・わかりやすいデザインもロジックだ。
ちなみに本の元になったサイトがあり、そちらでもレベルの高い資料を作れるようになるだけのロジックが学べる。

tsutawarudesign.com

 

カーマイン・ガロ『スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン』(日経BP社)

プレゼンの名手として知られるスティーブ・ジョブズ。彼のプレゼンを見ると、英語がわからなくても、なんだかすごいというのが伝わってくる。製品はどれも魅力的に見え、買わずにはいられなくなる。
伝わるデザインは資料のカタチを整える指南書だが、本書はプレゼンがどうあるべきか、また聴衆のこころを掴むためのテクニックが紹介されている。
ジョブズのように気の利いたことを言って観衆を惹きつけられれば理想的だが、誰しもがそんな話術を持っているわけではない。でも観客になんだかすごいなと思わせたり、心理的な障壁を弱めて話を聞いてもらいやすく事はできる。
本著と伝わるデザインの基本の内容を実践できれば、クラスで1番プレゼンが上手い人になれるだろう。

 

 

さいごに

以上がぼくがオススメする10冊だ。
ここで挙げた本以外にも良書だと思っている本はごまんとあるし、ぼくの価値観を変えた本もたくさんある(石田衣良『娼年』など)

今回の選書は、ぼくの行動や思考の基準となっている本を選んだ。言い換えるならぼくの譲れないものだ。
また専攻の学問の本は否応がなしに読むはめになるので、ここでは教養方面の本を選んだつもりだ。

本は見知らぬ世界を教えてくれるし、自分の考えの補強や、自分とは違う考えに触れて居住まいを正すこともできる。

大学はモラトリアムだといわれる。書に触れ、自身を成熟させるのにちょうどよい時期だ。書を読んで、町に出よう